療育内容について~困った行動編~

Q.多動・飛び出しがあります

A.多動の原因は、体力が余っているとか周囲への興味が強いからというものではありません。目的意識が頻繁に途切れるので自分の行動をコントロールできないことにあります。方法としては、多動にならず、自分の身体のコントロールができるような課題をこまめに根気よくやってゆくしかありません。具体的には・・・

1. 歩き続ける・スクワットなどの運動が続けられるようにしましょう。
ポイント1 目標時間を決め徐々に長くしていきましょう。
ポイント2 トレーニングの方法は簡単すぎても難しすぎてもだめ、その子にあった課題と時間を設け、本人が「できた!」と達成感をもてるように調整しましょう。

2.一定姿勢の保持 正座・立位・ぶらさがりなど 生活の中で取り組みましょう。

Q.スケジュールにこだわる・変更ができない

A.私たちは1日のスケジュールや今後の予定を立てて生活しています。しかし予定とは「未定であって変更があり得る」という暗黙の了解があるものです。ところが自閉症児・者は、「予定は未定」ということが理解しづらく、かつ「他者の都合」や「周囲の状況」がわからないので「予定は決定」と思い込んでしまいます。
ですから、変更があると反発やパニックを引き起こしてしまいます。
これを「見通しの立たない故の不安感」と捉えがちですが、そうではなく自閉症特有の、変更されること自体への反発と捉えた方が良いです。
一般的にはスケジュールボードで見通しを持たせることが良いと言われています。しかし、その予定を教えれば教えるほど、本人のこだわりを強化して変更に応じられなくなってしまうことがあります。
予定を細かく教えるよりも「予定変更が常に当たり前」ということをパターン化すると色々な状況に対応できるようになります。
例えば
・朝、顔を洗うのと歯磨きの順番を逆にしてみる
・食事の席を毎回変える
このように「ちょっとした変更の指示に応じる」ことができる練習を積み重ねましょう。そうすることで変更に応じられる耐性を養っていきます。
発プロNo.144参照)

Q.パニックがひどいのですが話せるようになったらパニックは減りますか?、どう対応したらよいですか?

A.かんしゃくやパニックはことばの有無や気持ち(意思)とは関係なく起ります。「話せないからかんしゃくやパニックを起こす」という分析や見方が必ずしも正しいとは言えません。
発語訓練は時間をかけて進めますが、その間にかんしゃくやパニックが強化されてしまうと、発語してもコミュニケーションどころではなくなってしまいます。かんしゃく・パニックを減らすことと、発語訓練は一旦分けて、並行して進めましょう。
① かんしゃく・パニックの回避と低減
常同行動が出ている時や体に力が入っている時は、触ったり普通の声かけをしただけでパニックになってしまうことがあります。
このような状態の時は脳の活動が低下しており、コミュニケーションをとる脳が働かない状態といえます。この脳の状態を引き上げ維持することが、かんしゃくやパニックを回避するポイントです。
そのためには、目的行動(やること)を提示し、無目的な時間を極力つくらないようにしましょう。

② 発語訓練
コロロの発語プログラムでは、はじめは音声は使わず文字学習から行います。書字学習で「文字には音がある」という気づきを狙い、その後音声を入れることで【イラスト=文字=音声】へとつなげていきます。
詳しくは「新発語プログラム①」「新発語プログラム②」をご覧ください。
また、発語には口や舌のコントロールが必要です。発語プログラムと合わせて、体づくりを並行して行います。
かんしゃくやパニックは、よく言い聞かせればそのうち無くなるものではありません。刺激(原因)と反応を分析し、悪い反応をパターンにしないようにしていきましょう。
発プロNo.144参照)

Q.自傷をやめさせたい

A.自傷行為は見ているのもつらいですよね。
まず何がきっかけで自傷行為に発展するでしょうか。学校で嫌なことがあった、気に入らないことがあったということだけではなく、直前に何があったかを分析することが大切です。イライラしている表情、呼吸が荒い、動きが速い・強い等々の「危ないな」という時はささいな刺激でも自傷を誘発します。例えば本人への呼びかけ、接触、物音など、生活する上でよくあることが刺激になります。危ないな、という時にはそれらを調整し、なるべく自傷へ発展しないよう気をつけながら、同時に「自傷しない身体づくり」をしてゆきましょう。

①ぼんやりする時間をできるだけ減らす
手持ち無沙汰でぼんやりしているようなとき、このようなささいな刺激がきっかけで自傷行為をしてしまうお子さんが多いです。逆に、手作業やお手伝いで頭を使ったり、体を動かしているときは出にくくなります。簡単な手作業でよいので、やるべきことを切れ間なく示してあげることで、ぼんやり自傷に浸ってしまう時間をできるだけ作らないようにしましょう。

②歩行
歩行は、自傷が出にくい身体づくりのために最も効果的です。手つなぎをして淡々とリズムよく歩くと、自然と問題行動が収まり呼吸が落ち着いてきます。
他にもコロロでは、身体のコントロール力・静止力UPを目指した行動トレーニングにも取り組んでいきます。

もし、自傷が始まってしまったら、出始めの力が弱いときに、さりげなくお手伝いや作業などに気をそらせるのがよいでしょう。力づくで止めようとすると、よりひどくなってしまう場合が多いので、慎重に対応していきましょう。
しかしやはり身体コントロール力と認知力を高め、地道に本人の力を伸ばしていくことがなによりの予防になると思います。

Q.他害をやめさせたい

A.他害が出てからとめる、というのはとても難しいものです。コロロでは、他害や自傷が出ないような過ごし方を心がけています。
まず、他害が出てしまう前のお子さんの様子はどうでしょう。他害になる前、身体が揺れていたり、独り言が出ていたり、姿勢が崩れていたり、ということはありませんか?
このような時は頭を使っておらずぼんやりしていている状態で、急な声かけや促しに反射・衝動的に反応してしまいやすいです。それがお子さんの場合は「噛みつき」として出てしまっていると考えます。
まずはできるだけ、ぼんやりした状態の時間を減らすよう、過ごし方を見直すことです。そして、ぼんやりしているときには、むやみに声をかけず、少しタイミングを待って促すようにしてみましょう。
このような他害は繰り返すとパターン化しやすいので、出てしまってから対応するのではなく、お子さんの様子をよく観察し、原因を見極めて問題行動を出させない関わりをすることが大切です。